第7回 英語の読み書きは焦らなくてOK!
英検Jr.®︎マガジン第362号
※このコラムは、2025年10月10日に配信された英検Jr.®︎マガジン(メルマガ)の内容です
公開日:2026.05.12
最終更新日:2026.05.13
目次
英語を「読んで、わかる」は日本語以上に難しい
今回は、英語を「読んで、わかる」ということが子どもにとっていかにハードルが高いか、ということをお伝えしたいと思います。
我が子が英語の単語やセンテンスを聞いて理解したり、英語を口にしたりするようになると、次は読み書きのステージだ…と思うかもしれません。
しかし、焦りは禁物です。「聞く・話す」というのは人間の成長過程においては自然なことで、赤ちゃんは大人の声を聞き、それを真似てコミュニケーションを取ろうとします。一方、「読む・書く」は「文字」という文化的な発明を使う行為であり、勉強を通して意識的に学んで習得するスキルです。
母語である日本語でさえ、読み書きは学校という場で学びますから、第二言語である英語の読み書きを小さいうちに家庭で習得するのはとても難しい…ということを、まずは理解していただきたいと思います。
また、読み書きのハードルの高さの要因には、英語という言語の特性もあります。
英語ネイティブでも読み書きは最初から難しい
日本語のひらがなは、文字と発音が一対一対応していますが、英語のアルファベットはそうではありません。例えば、同じ「c」でも「cat」と「city」では発音が異なり、英語を母語とする子どもにとっても、英語の読み書きは最初は難しいのです。

ちなみに、文字の読み書きが極度に苦手な「ディスレクシア(dyslexia)」という脳の特性がありますが、ディスレクシアは英語圏では発生率が高いことがわかっています。
そのため英語圏では、読み書きに効果的な学習法について古くから議論や研究が活発で、現在では「フォニックス」が教育現場などでも広く実践されています。
英語ネイティブの子どもたちがフォニックスを学び始めるのは、一般的には小学校入学前後です。であるならば、英語が第二言語である私たち日本人が、就学前に英語の読み書きのスキルを身につけるのは、相当早いということがわかると思います。焦って始める必要はありません。
英語を「聞いて、わかる力」は大きなアドバンテージになる
焦って始める、つまり、子どもがその発達段階に至っていないのに、無理に英語の読み書きをさせると、子どもが英語嫌いになる可能性もあります。
幼児期の英語教育で大切なのは「英語が好き」という気持ちを育てること
そもそも、なぜ我が子に早期から英語に触れさせてきたのでしょうか。おうち英語に取り組まれているご家庭の多くは、大人になったときに困らないため、英語で苦労しないためなど、我が子の10年、20年後を見据えて取り組まれていることと思います。特別に早熟な英語天才にならせたいわけではないですよね。
幼児期の英語教育において大切なのは、長い目で見て考えること。家庭内だけで完結させず、いかに学校教育につなげていくかという視点も大事だと私は考えています。
今は小学校から英語に触れる機会がありますし、中学校からは本格的に英語を学ぶことになります。そして、学校、大学、社会で長期的に学んでいくうえでは、英語を学びたいという意欲や主体性が重要であり、この根幹となるのが「英語が好き・英語って楽しい」というワクワク感です。その芽を育てることが、幼児期の英語教育においてはもっとも大事なのです。
今は「聞いてわかる・楽しめる」でOK
もちろん、アルファベットに興味がある、英語の絵本を自分で読んでみたいという意欲があるというお子さんの場合は、どんどん読みものを与えてあげて良いでしょう。そうではない場合は、これまで通りの「多聴」で十分です。質の良いDVDや動画サイトを通して、 英語を「聞いてわかる・楽しめる」でOK。
英語を「聞いて、わかる力」は、今後の英語学習においてはかなりのアドバンテージになります。「聞いて、わかる」ができたら、その次の「読んで、わかる・書ける」は学校教育も活用して養う。それくらいの気持ちで、無理なく楽しく、英語を続けていただければと思います。
尾島 司郎 先生 (おじま・しろう)
早稲田大学 理工学術院 英語教育センター 教授
英国Essex大学博士課程修了(Ph.D in Language and Linguistics)。 滋賀大学 教育学部 准教授、横浜国立大学 教育学部 教授などを経て、2023年より現職。 第二言語習得論、言語脳科学、早期英語教育などの研究を通して、日本人の英語習得メカニズムの解明とその教育応用を目指している。2026年1月に新刊『おうち英語ゼミ』(研究社)を出版。3児の父で、大人バレエに挑戦中。
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