第5回 子どものアウトプットを引き出すには?(下)
英検Jr.®︎マガジン第358号
※このコラムは、2025年8月10日に配信された英検Jr.®︎マガジン(メルマガ)の内容です
公開日:2026.05.12
最終更新日:2026.05.13
目次
相手に伝わった喜びが次への意欲につながる
前回(7月10日号)は、インプットが蓄積されてアウトプットの準備ができたお子さんに必要なのは、話し相手がいる「英語を話す必然性のある環境」であるとお伝えし、オンライン英会話などの活用をおすすめしました。今回は、その続きとして、アウトプットはいかにして強化されていくかについてお話ししたいと思います。
「とにかく言ってみる」第一歩がカギ
アウトプットは、運動や楽器の演奏のように、実際にやってみることで体得していくものです。特にスピーキングの場合は、口に出さない限り、話せるようにはなりません。ですから、「とにかく言ってみる」という第一歩を踏み出すモチベーションを高めることがカギになります。
「できた!」という小さな成功体験を大切に
人間は社会的な生き物であり、元来、他者とコミュニケーションを取るのが好き。「自分の言いたいことが相手に通じた」という手応えは、「うれしい!」という喜びになり、「もっと伝えたい!」という次への意欲につながります。ピアノやダンスも同じですよね。できるようになると達成感が得られ、もっとやってみたくなる。「できた!」という小さな成功体験は、英語学習においてもとても大事です。
絵本の「リテリング」で発話をサポート
「自分の伝えたいことをゼロから考えて言う」というのは、実際にはかなりハードルが高いことです。そんなときに有効なのが、「リテリング(Retelling)」という活動です。リテリングというのは、すでに知っている内容やエピソードを再現・語り直しすることです。
発話の「足場」をつくってあげよう
何度も読んだ絵本に出てくる表現を使って、その絵本の内容を再生するのは、ゼロから自分の言葉で表現するよりも簡単ですよね。絵本のビジュアルの助けを借りながら発話の「足場」をつくってあげると、お子さんもアウトプットがしやすくなります。
私も大学の学生を指導する際には、作成したスライドの資料やキーワードなどを見ながらプレゼンテーションすることを推奨しています。ただ原稿を読み上げるのではなく、スライドをもとに自分の思考を交えながら話すのは、自由な会話のトレーニングにとても適しています。
一人1台端末が当たり前となった現在の小学校では、実際に児童がスライドを使って英語をしゃべっていることがあります。ご家庭では、お子さんが既によく知っている話をビジュアルの助けを借りながら、親に英語で聞かせてあげる活動だと考えて、気軽に取り組めばいいでしょう。

インプットとアウトプットは車の両輪
さて、ここまでアウトプットの話をしてきましたが、アウトプットの段階になっても継続的なインプットは不可欠です。アウトプットの目標は、滑らかに、正確に、話したり書いたりできるようになることです。アウトプットを繰り返すうちに、滑らかな英語にはなっていきます。
一方、正確性を高めるためには、やはりより多くのインプットが必要になります。これを怠ると、滑らかだけどブロークン…という英語になってしまいます。インプットとアウトプットは車の両輪のようなものなので、相互補完しながら続けていきましょう。
おうち英語はインプットだけでも意味がある
アウトプットの話をすると、「うちの子は全然話さない」と焦る保護者の方が出てきます。もちろんアウトプットができるに越したことはありませんが、おうち英語はインプットだけでも十分に意味があると、私は考えています。
「聞いて分かる」だけでも大きなアドバンテージ
大学の学生を見ていると、英語を「聞いて分かる」学生、つまりインプットはある程度できている学生と、「聞いても分からない」、つまり、インプットが十分でない学生がいます。後者はインプットの増強から始めなければならず、「聞いて分かる」というのは、それだけで大きなアドバンテージなのです。
例えば、「Yogurt(jóʊgɚːt)」は日本語のヨーグルトとは異なる発音です。英語の音がインプットされていない人は、「Yogurt」と聞いても「?」となってしまいますし、「Yogurt」という単語を発音しようとしても日本語の「ヨーグルト」のような発音になってしまいます。
幼いうちは「大量で良質のインプット」を意識して
インプットがあるかないかは、とても大きな違いです。インプットの蓄積があれば、あとからアウトプットを高めていくことは十分に可能です。幼いうちは、無理にアウトプットを引き出そうとするよりも、「大量で良質のインプット」を意識して英語に触れることを大切にしていただければと思います。
尾島 司郎 先生 (おじま・しろう)
早稲田大学 理工学術院 英語教育センター 教授
英国Essex大学博士課程修了(Ph.D in Language and Linguistics)。 滋賀大学 教育学部 准教授、横浜国立大学 教育学部 教授などを経て、2023年より現職。 第二言語習得論、言語脳科学、早期英語教育などの研究を通して、日本人の英語習得メカニズムの解明とその教育応用を目指している。2026年1月に新刊『おうち英語ゼミ』(研究社)を出版。3児の父で、大人バレエに挑戦中。
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