子どもが英語を話さない…絵本リテリングで発話を引き出す方法(後編)
英検Jr.®︎マガジン第358号
※このコラムは、2025年8月10日に配信された英検Jr.®︎マガジン(メルマガ)の内容です
公開日:2026.05.12
最終更新日:2026.08.12
目次
英語が「伝わった」という成功体験が次への意欲につながる
前回(7月10日号)は、インプットが蓄積されてアウトプットの準備ができたお子さんに必要なのは、話し相手がいる「英語を話す必然性のある環境」であるとお伝えし、オンライン英会話などの活用をおすすめしました。今回は、その続きとして、アウトプットはいかにして強化されていくかについてお話ししたいと思います。
「とにかく言ってみる」第一歩がカギ
アウトプットは、運動や楽器の演奏のように、実際にやってみることで体得していくものです。特にスピーキングの場合は、口に出さない限り、話せるようにはなりません。ですから、「とにかく言ってみる」という第一歩を踏み出すモチベーションを高めることがカギになります。
「できた!」という小さな成功体験を大切に
人間は社会的な生き物であり、元来、他者とコミュニケーションを取るのが好き。「自分の言いたいことが相手に通じた」という手応えは、「うれしい!」という喜びになり、「もっと伝えたい!」という次への意欲につながります。ピアノやダンスも同じですよね。できるようになると達成感が得られ、もっとやってみたくなる。「できた!」という小さな成功体験は、英語学習においてもとても大事です。
絵本の「リテリング」で子どものスピーキングをサポート
「自分の伝えたいことをゼロから考えて言う」というのは、実際にはかなりハードルが高いことです。そんなときに有効なのが、「リテリング(Retelling)」という活動です。リテリングというのは、すでに知っている内容やエピソードを再現・語り直しすることです。
発話の「足場」をつくってあげよう
何度も読んだ絵本に出てくる表現を使って、その絵本の内容を再生するのは、ゼロから自分の言葉で表現するよりも簡単ですよね。絵本のビジュアルの助けを借りながら発話の「足場」をつくってあげると、お子さんもアウトプットがしやすくなります。
私も大学の学生を指導する際には、作成したスライドの資料やキーワードなどを見ながらプレゼンテーションすることを推奨しています。ただ原稿を読み上げるのではなく、スライドをもとに自分の思考を交えながら話すのは、自由な会話のトレーニングにとても適しています。
一人1台端末が当たり前となった現在の小学校では、実際に児童がスライドを使って英語をしゃべっていることがあります。ご家庭では、お子さんが既によく知っている話をビジュアルの助けを借りながら、親に英語で聞かせてあげる活動だと考えて、気軽に取り組めばいいでしょう。

インプットとアウトプットは車の両輪
さて、ここまでアウトプットの話をしてきましたが、アウトプットの段階になっても継続的なインプットは不可欠です。アウトプットの目標は、滑らかに、正確に、話したり書いたりできるようになることです。アウトプットを繰り返すうちに、滑らかな英語にはなっていきます。
一方、正確性を高めるためには、やはりより多くのインプットが必要になります。これを怠ると、滑らかだけどブロークン…という英語になってしまいます。インプットとアウトプットは車の両輪のようなものなので、相互補完しながら続けていきましょう。
おうち英語はインプットだけでも十分に意味がある
アウトプットの話をすると、「うちの子は全然話さない」と焦る保護者の方が出てきます。もちろんアウトプットができるに越したことはありませんが、おうち英語はインプットだけでも十分に意味があると、私は考えています。
「聞いて分かる」だけでも大きなアドバンテージ
大学の学生を見ていると、英語を「聞いて分かる」学生、つまりインプットはある程度できている学生と、「聞いても分からない」、つまり、インプットが十分でない学生がいます。後者はインプットの増強から始めなければならず、「聞いて分かる」というのは、それだけで大きなアドバンテージなのです。
例えば、「Yogurt(jóʊgɚːt)」は日本語のヨーグルトとは異なる発音です。英語の音がインプットされていない人は、「Yogurt」と聞いても「?」となってしまいますし、「Yogurt」という単語を発音しようとしても日本語の「ヨーグルト」のような発音になってしまいます。
幼いうちは「大量で良質のインプット」を意識して
インプットがあるかないかは、とても大きな違いです。インプットの蓄積があれば、あとからアウトプットを高めていくことは十分に可能です。幼いうちは、無理にアウトプットを引き出そうとするよりも、「大量で良質のインプット」を意識して英語に触れることを大切にしていただければと思います。
英検Jr.® オンライン版
「聞いてわかる力」、今のお子さまはどのくらい?
英検Jr.®オンライン版なら、リスニング力をゲーム感覚で確認・強化できます。
※会員登録後、1日無料でお試しいただけます
尾島 司郎 先生 (おじま・しろう)
早稲田大学 理工学術院 英語教育センター 教授
英国Essex大学博士課程修了(Ph.D in Language and Linguistics)。 滋賀大学 教育学部 准教授、横浜国立大学 教育学部 教授などを経て、2023年より現職。 第二言語習得論、言語脳科学、早期英語教育などの研究を通して、日本人の英語習得メカニズムの解明とその教育応用を目指している。2026年1月に新刊『おうち英語ゼミ』(研究社)を出版。3児の父で、大人バレエに挑戦中。
英検Jr.®︎オンライン版の
1日無料体験実施中
あなたのお子さまも英語が好きになる!英語学習を応援します。
英語が好きになる仕掛けをいますぐ体験!
-
英語の正しい発音は大事? 伝わればOK?
発音はどこまで気にするべき?
英語は世界の共通言語であり、英語を母国語としない人々の、いわゆる「母語訛り(なまり)のある英語」はいろいろなシーンで耳にします。
「多少発音が悪くても、伝わればいい」というのは一つの考え方ですし、ある意味ではもっともだと思いますが、発音が不正確だとコミュニケーションが成立しにくいのも事実です。
ネイティブのような発音を目指す必要はありませんが、「努力できるところ...
2026.08.27 -
「フォニックス」ってなに?メリットは?
フォニックスを学ぶなら、英語の音に慣れてから
「フォニックス(Phonics)」とは、英語の文字(アルファベット)と音の対応関係を体系的に学ぶための学習法の一つです。
主に英語圏の子どもたちが読み書きを習得するために用いられるもので、アメリカでは小学校入学前後(6歳前後)から取り組み始めるのがスタンダードです。
アルファベットを用いた英語の表記方法(スペリング)は 、日本語のひらがなとは異な...
2026.08.27 -
英語学習に「歌」が有効なワケ
英語のリズムや抑揚に慣れ、脳に刻み込む
英語は、日本語に比べてリズムや抑揚、音の強弱がはっきりしている言語です。これが日本人にとっては難しく、発音同様、大人になってから身につけるのは容易ではありません。
一方、早くから英語音声のこうした特徴に慣れておくと、英語がより聞き取りやすくなり、話すときも滑らかになり相手にも伝わりやすくなります。
そして、英語のリズムや抑揚を身につけるのに適しているのが...
2026.08.27 -
子どもの英語学習を長く続けるためのコツとは?
「英語って楽しい」が内発的動機につながる
本連載ではこれまでに何度も、「英語は長くコツコツと続けることが大事」とお伝えしてきました。では、長く続けるためにはどうしたらいいのか、今回はそのコツについて書きたいと思います。
まず、大前提として、「続けられなくても(保護者自身が)自分を責めない」ことが大切です。子どもの英語学習は、肩肘張って無理してやるものではなく、普段の生活や遊びの中でできる範囲で...
2026.08.27