第6回 「英語」と「思考」を結びつける
英検Jr.®︎マガジン第360号
※このコラムは、2025年9月10日に配信された英検Jr.®︎マガジン(メルマガ)の内容です
公開日:2026.05.12
最終更新日:2026.05.13
目次
日本語を介さず、英語と思考をダイレクトにつなぐ
英語を学習していると、「英語を英語のまま理解することが大事」というフレーズをよく見聞きしますよね。これをもう一歩踏み込んで表現すると、「英語と思考を結びつける」ということになります。
「英語―思考」のリンクが英語学習の鍵
英語学習では、日本語を介さない「英語―思考」のリンクが非常に重要です。そして、母語である日本語が未発達な幼児期には、英語と思考が直接結びつきやすく、この点で幼児期の英語学習は有効であると言えます。
例えば、映像や絵本などで今りんごの話をしているのが明らかな場合、「apple(ˈæpl)」が日本語の「りんご」という単語と対応していると説明されなくても、子供は状況から、あの赤いフルーツ(りんごの概念)と「apple」を結び付けて学習することができます。このような形でインプットを続ければ、脳内の英語のネットワークと思考のネットワークは直接結びついていきます。
学校英語では「英語―日本語」の結びつきが強くなりやすい
一方、日本の一般的な学校での英語学習環境では、「英語―日本語」の結びつきがどうしても強くなってしまいます。というのも、「英語をどのくらい理解しているか」を測るテスト問題は、和訳問題がつくりやすさの点で好都合だから。昨今は、大学入学共通テストのように、日本語を介さずに英語を理解することを意図したテストも見受けられますが、まだまだ和訳問題も残っています。
もちろん逆方向の和文英訳問題もあります。テストで和訳・英訳問題が出るからには、その対策として和訳・英訳のトレーニングをしますよね。そういった背景があり、英語のネットワークと日本語のネットワークの結びつきが強くなりやすいのです。
幼児期の英語のインプットが素地をつくる
「話す・聞く」ではタイムラグが問題になる
「英語⇒日本語⇒思考」という日本語を介した理解が完全にNGなわけではありません。「英語―思考」「英語―日本語」のつながりには相乗効果もあるでしょう。しかし、英語と日本語は語順が違い、英語を日本語に訳そうとすると行ったり来たりが必要で時間がかかります。
幼児期こそ「英語―思考」の素地づくりに最適
そして、特に「話す・聞く」コミュニケーションにおいては、このタイムラグが問題になります。頭に浮かんだことを英語で表現する、英語で聞き取ったことをそのまま理解する。その素地をつくるには、幼児期の英語のインプットが適していると言えるでしょう。
身に染み付いた「英語と日本語の結合」からの脱却
では、幼児期の英語のインプットでは、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。まず大事なのが、保護者自身が、「英語と日本語の結合が自らの体に染み付いている」かもしれないという自覚を持つこと。
「Appleってなあんだ?」のやり取りもおすすめできない理由
親「Appleってなあんだ?」
子「りんご!」
親「正解!」
このようなありがちなやり取りも、「英語―思考」のつながりを強化するうえではおすすめできません。英語教師として教壇に立つとよく分かりますが、自分が昔教えられた以外の方法で人に何かを教えるのは思いのほか難しいものです。

状況から推測できる教材選びが「英語―思考」を育てる
ですから、自分が教えられた方法は子供には合わないかもしれないと、まずは意識することが大切です。その上で、子どもに英語の意味を日本語で説明するような教材ではなく、子ども自身が状況から推測することにより英語の意味が分かるように仕組まれている教材を選ぶようにすればよいでしょう。
英語を英語のまま受け入れ理解する…という“学び方(インプット)のクセづけ”が幼い頃にできていると、その後の英語学習でも「英語―思考」がダイレクトに結びついた学びが可能になり、英語をアウトプットする際にも思考から英語というスムーズな流れをつくることができます。皆さんも英語をしゃべらないといけない場面で日本語が先に出てきてしまって、それを英語に訳そうと試みるも、結局、不自然な英語になってしまった経験がないでしょうか。
状況とセットにして英語を英語のまま受け入れ理解するということを子供のころから繰り返していると、似た状況になったときに、日本語から出発するのではなく、最初から英語で発話しやすくなります。アウトプットの際の思考から英語という流れの土台をしっかりつくるためにも、子供に与えるインプットを親が適切に選んであげる必要があるのです。
尾島 司郎 先生 (おじま・しろう)
早稲田大学 理工学術院 英語教育センター 教授
英国Essex大学博士課程修了(Ph.D in Language and Linguistics)。 滋賀大学 教育学部 准教授、横浜国立大学 教育学部 教授などを経て、2023年より現職。 第二言語習得論、言語脳科学、早期英語教育などの研究を通して、日本人の英語習得メカニズムの解明とその教育応用を目指している。2026年1月に新刊『おうち英語ゼミ』(研究社)を出版。3児の父で、大人バレエに挑戦中。
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