英検Jr.®︎ Magazine

第1回 「子どもは語学の天才」は本当?

英検Jr.®︎マガジン第350号
※このコラムは、2025年4月10日に配信された英検Jr.®︎マガジン(メルマガ)の内容です

公開日:2026.04.27
最終更新日:2026.05.13

第二言語習得のメカニズムを探る!

2025年度、英検Jr.®メールマガジンを担当する早稲田大学の尾島司郎と申します。これまでの研究成果などを交えながら、日本で暮らす子どもたちにとってどのような英語学習が効果的なのか、保護者はどのようなサポートができるのか、分かりやすくお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

第1回の今回は、私がどのような研究をしているのかについてご紹介します。私の最大の関心事は、「第二言語習得のメカニズム」です。このメカニズムを言語学、認知科学、脳科学など様々な観点から分析・解明し、メカニズムに沿った効果的な英語学習法を見いだし、自分で実践したり保護者や英語教員の皆さんにお伝えしたりすることが、私の研究の目的となっています。

理論と実践の双方向アプローチ

また、私の研究では、私自身を含めて英語教員が授業で実践している英語教授法や、保護者の皆さんがお子さん向けに家庭で実践している英語学習法の効果検証にも関心があります。そして、効果のあった方法をもとに、第二言語習得のメカニズムを解明する…というアプローチを採用することで、理論から実践、実践から理論の双方向で考えることを大事にしています。

「年齢の低い子どもの方が有利」はホント?

英語学習の効果を検証する上で重要なファクターの一つが、「年齢」です。世間一般的に、「子どもは語学の天才」などと言われ、第二言語の学習・習得においては大人よりも子どものほうが有利だというイメージがありますよね。年齢と学習の関係は脳科学や生物学の領域においても関心度の高いテーマとなっており、様々な研究が行われてきました。

「効率」で見ると、幼い子どもは不利?

興味深いのが、「年齢の低い子どもの方が有利」とは、一概には言えないこと。幼い子どもの言語習得スピードはとてもゆっくりなので、「効率」という観点で言うと良くはありません。効率だけで言うと、中学生になってから教科書を使って文法を学んで、語彙を覚えて…と、体系的に英語を学んだ方が、特に学習の初期においては速く上達します。

ではなぜ、幼い子どもは時間がかかるのか? 詳しくは次回以降に紹介しますが、子どもの自然な言語習得のメカニズム上、「ゆっくりにならざるを得ない」のです。

早期英語の優位性が出るまでには「数千時間」必要

一方、早期から英語に触れているほど、長期的に見ると(後発で英語を学び始めた学習者よりも)第二言語の習熟度が高くなる…という研究結果もあります(下記のグラフを参照)。そう聞くと、やっぱり早期から英語に触れることが有効なんだ…と思われるかもしれませんが、早期に始めることの優位性は、英語との接触時間が数千時間を超えないと生まれないと、私は考えています。数千時間…というのは膨大な時間です(小学3年生から外国語活動をスタートさせ、大学まで英語を履修しても、英語授業の合計時間は1,500時間に満たないと言われています)。

注意:この研究は「英語圏への移民」が対象

そして、注意すべきは、この研究は英語圏への移民を対象にしたもの(移住時の年齢と英語習熟度を長期的に調査した研究)であることです。ほぼモノリンガル(日本語だけで事足りる)の国である日本での生活環境とは異なります。日本で幼少期のうちに数千時間もの間、英語に触れるというのは、簡単ではありません(ただし、現在ではそのような子どもが実在します)。

他の子と比べず、我が子の成長を楽しもう

では幼少期から英語に触れても効果がないのかというと、決してそんなことはありません。追々お話ししますが、得るもの、そして後々まで残るものは確実にあるでしょう。日本で生活しながらだと子どもが完全なバイリンガルにならないのは当然…くらいのリラックスした気持ちで、マイペースに取り組んでいただきたいと思います。SNSなどで拡散される一部の成功例の子どもと我が子を比較したりせずに、その子自身の成長を楽しんでください。ネイティブや他の子どもと比較してマイナスに感じるのではなく、我が子自身が成長することをプラスに考える姿勢が大事です。

マイペースにしても、やるからには効果的な方法で取り組みたいものですよね。そこでカギになるのが、「良質で大量のインプット」です。これについては次回以降のメールマガジンで詳しくお伝えしたいと思います。

目指すは「ノンネイティブとしての英語らしい英語」

言わずもがな、英語はグローバル化が進む社会において不可欠なコミュニケーションスキルです。今や世界各地で英語が使用され、「World Englishes」と呼ばれるネイティブではない英語のバリエーションも多数生まれています。そうしたなか、私たち日本人も、ノンネイティブとして、英語らしい英語を使えるようになることを目指せば良いのではないかと、私は考えています。

第二言語(英語)習得のゴールを改めて考えよう

「ノンネイティブとしての英語らしい英語」というのは、間違ってはいけないということではなく、「ノンネイティブとして正しい文法や発音を身に付ける努力をした結果の英語」という意味合いです(その努力をせず「とにかく通じればいい」をゴールにしないことが大切です)。もちろん、ネイティブ並みになりたいという人もいるでしょうし、目指すところは人それぞれです。第二言語(英語)習得のゴールをどこに置くのか、改めて考えてみることをおすすめします。

この記事の監修者
尾島 司郎 先生

尾島 司郎 先生 (おじま・しろう)

早稲田大学 理工学術院 英語教育センター 教授

英国Essex大学博士課程修了(Ph.D in Language and Linguistics)。 滋賀大学 教育学部 准教授、横浜国立大学 教育学部 教授などを経て、2023年より現職。 第二言語習得論、言語脳科学、早期英語教育などの研究を通して、日本人の英語習得メカニズムの解明とその教育応用を目指している。2026年1月に新刊『おうち英語ゼミ』(研究社)を出版。3児の父で、大人バレエに挑戦中。

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